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映画感想『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』

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eyesky.jp

 

何も罪のない民間人である少女を巻き込んでしまう可能性がある中、ドローン偵察機からのテロリストへのミサイル攻撃をすべきか。

それが本作の簡単な筋書きである。それ以上でもそれ以下でもない。
緊迫感という観点でのエンターテイメント性はあるものの、ストーリーは非常にシンプルで、それだけにテーマを直視しなければならず重苦しい作品だった。


本作は所謂「トロッコ問題」を扱っている。
「トロッコ問題」とは下記のようなものだ。

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線路を走っていたトロッコが制御不能になった。
そのまま進めば、線路上にいる5人をひき殺してしまう。
そしてA氏がトロッコの先にある分岐点のところにいた。
A氏が進路を切り替えれば5人は助かる。
ただし切り替えた先にはB氏がおり、B氏はひき殺されてしまう。

「5人を助ける為に他の1人を殺してもよいか」という問題
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本作の内容にあてはめると「何十人にも及ぶ(と予測される)テロの被害者を救うために、目の前の1人の少女を犠牲にしてよいか」という問題になる。
アメリカ、イギリス、ケニア、それぞれの国に複数人の意思決定者がおり、現代のトコッコ問題について時間がない中でのギリギリの議論・駆け引きを展開する。

アメリカは単純である。完全なる功利主義で、迷う余地もなく「(少女を巻き込む可能性があっても攻撃する」という選択をする。
イギリスは、立場によって取るスタンスが違う。軍部は、その存在が敵ありきで成り立っているものであり「テロリスト=敵を攻撃をする」というスタンスだ。
一方でイギリスの大臣は、時には感情論で攻撃に反対し、攻撃という選択肢を取らざるを得なくなった場合には、他大臣・首相に(意思決定の)責任転嫁しようとする。

それぞれの正義、ジレンマがあり、決断が伸びていく。
ただ現場の状況はテロ実行に向けて刻一刻と状況が変化していく。
その緊迫感が手に汗を握らせる。


「結果どうなったのか、ということは鑑賞してもらって」ということになるが、
現代のテロ戦争におけるトロッコ問題に関して考えさせられる作品である。


そして、本作のもう1つの大きなテーマが「ドローン偵察機(無人戦闘機)の是非」である。

数年前『クーリエ・ジャポン』という雑誌で読んだ記事(海外記事を訳したもの)が記憶に残っている。『「TVゲーム化」したアフガン戦争で、兵士たちは地球の裏側から人を殺す』というタイトルの記事だ。

兵士は、何も危険のないアメリカ本土の操縦室の中で戦闘機を動かす。
画面を観ながら手元のボタンを押すと、ミサイルが放たれ画面の中の人が死ぬ。
そして時間がたつと、兵士は基地を出てタバコを吸い、スーパーで買い物をして、家族と共に家で過ごす。

子どもを無人偵察機で殺した兵士もいただろう。
そんな兵士も、家に帰れば自分の子どもがいる。
このような状況が重なった兵士は精神的ストレスがたまり、PTSDになってしまう。

記事はそのようなことを書いていた。

本作の中でも、アラン・リックマン演じる陸軍中将フランク・ベンソンは、孫のためにぬいぐるみを選んでいる描写がある。
一方で遠く離れた会議室では、民間人の子どもを犠牲にしてでもテロリストに対する攻撃をしようという話をしている。
ドローン戦争における兵士の問題点を示唆している描写だと思われる。

Newsweekの記事にも詳しいので、参照いただきたい。

www.newsweekjapan.jp


アメリカは、2016年7月に2009~2015年の間に米軍による無人機(ドローン)攻撃で死亡した民間人の数を発表し、
イラクアフガニスタン以外の地域で64~116人が死亡したとの推計を明らかにした。
当局関係者によると「厳格な報告手続きを制度化し次期大統領に引き継ぐ狙いがある」とのことである。

※参照『米、無人機攻撃での民間人犠牲者数を公表

www.cnn.co.jp



兵士の(少なくとも肉体的な)犠牲はないために、アメリカ軍は無人戦闘機を推進してきたはずだ。
そして今年のこの発表は、罪の意識と批判を最小限に抑えるための施策の2つの考えが背景にあるように思える。

国と言う大きな枠で考えると、無人戦闘機は自国の犠牲者を最小限に抑えることができメリットが大きい。ただ人道的な観点、また個人の感情の観点で考えると、存在意義が問われるものになる。
ドローンの商業利用も進んでいく中、今後もその是非に関する議論は活発化するであろうし、考えなければいけないものであろう。


最後に、アラン・リックマンと彼が演じた陸軍中将フランク・ベンソンとについてふれておきたい。
本作は、『アリス・イン・ワンダーランド』と共に彼の遺作となった。
撮影していた当時は遺作になろうとは思われていなかったかと思うが、彼が演じた陸軍中将フランク・ベンソンの最後のセリフが頭に強く残っている。

強い言葉だった。スクリーンの中の彼は、紛れもなく軍人だった。
そのシーンで、彼はその映画を、文字通り「もっていった」。

アラン・リックマンといえば、初めてスネイプ教授としての彼を見た時は衝撃だった。
スネイプ教授そのものだった。

そんな存在感のある俳優を、本作で見納めることを喜びつつこのレビューの締めとしたい。